2016年8月13日土曜日

2016年夏に観に行った映画の感想文

2016年の夏は、5本映画見てきました。個人的ランキングとネタバレ含むだらだらとした感想です。
見てきたのは以下:

  • 「シン・ゴジラ」
  • 「インディペンデンス・デイ・リサージェンス」
  • 「帰ってきたヒトラー」
  • 「貞子vs伽倻子」
  • 「ガルパン 劇場版 極上爆音上映会」

ネタバレもありますので注意してください。




1位「シン・ゴジラ」


一番おもしろかった。明らかに東日本大震災の津波と、その後の福島第二原発の事故をモチーフとしていながら、政治群像を主体に据えたシュールなブラックジョーク・ユーモアを散りばめた傑作。
最初の津波をモチーフとした第一次災害は、「え、これがゴジラ?」と見まごうほどの全く別物の姿をした生物がやってくるのだが、確かに背びれなどはゴジラ。で、これが形を変えて、一気にゴジラっぽくなってくるわけです。それで一旦は海に帰っちゃうんですよねー。
その後ゴジラの形になって再上陸してくるわけですが、今回のゴジラ、なんか異様だな、というのがあって。自衛隊の戦車やヘリからのもう攻撃にも全く動じず東京を縦断してくるのですが、なんというか、「生き物」という感じがしないんですよね。
以前のゴジラは、なんだかんだ言いつつも原発を狙う、つまりお腹が減ったので放射性物質が大量に保管されてる原発に行こうとしてるので生き物らしいですし、人間側の攻撃についても効果が出てて怯んだり、姿勢を崩したりしてるわけです。また、他の怪獣との対決ものでもなんだかんだ言って人間側に味方してる、つまり脊椎動物全般に人間が抱けるような感情移入を、ゴジラでもできてました。
てか、平成ゴジラって人間側のテレパシストがある程度ゴジラと意思疎通できてたような・・・。
ところが今回のゴジラ、そうした動物らしさを全く感じさせないのです。で、誰かのレビューにあったのですが、「なるほど」と納得できたのに「耳と舌が無い」というのがありました。そうです、今までのゴジラは、頭の後ろの方にちょこっとした耳っぽい出っ張りがありましたし、なんだかんだで舌があったんですよ。ところが今回はそれが無い。目と、キバで埋まった口だけなんですな。しかも自衛隊の攻撃に全くひるまず・・・なんというか、今回のゴジラほど、「制御不能な自然現象」を巨大怪獣として的確に表現できたゴジラは、今まで無かったんじゃないですかね。劇中ではゴジラが上陸した目的も不明なままで、何も聞かず、何も食べず、ただ悠然と上陸してどこかへ向かっているという、理由なき理不尽な「災害」とその怖さも十分に伝わりました。

あと、恒例のゴジラが吐き出す熱線ですが、今回はもう本当に、「火を吐く」という表現がすごいよく出来てました。大量の火炎でビルがどろどろに溶けながら火の中に飲み込まれてく様子など、原爆さながらです。更にその後、青いビームとなって収束されて、背中からも四方八方に青いビームで夜空を切り裂くゴジラなど、史上初ではないでしょうか。しかもこのビームが、都心部に立ち並ぶ高層ビルをばんばん切り裂いてくんですよね。破壊のカタルシスも存分に描けてます。

都心で散々暴れまわった後にエネルギーが一旦切れて冬眠みたいな状態になり、その間に国家機能を立川に移転して日本側が体勢を整え直すわけですが、ここでも政治群像活劇として色々楽しめるわけです。この辺は他の人達もレビューしてます。ただ、やはり日本側の反撃方法がトンデモです。

いやね、ゴジラの体組織を解析して、冬眠というか代謝を止めてこおりづけにするというところまでは良いのですよ。
なのに、その液体を注入するのが、経口投与ってなんじゃそりゃー!!!ここから一気にトンデモになるのですが、このトンデモ展開が、そこまでで散々、糞真面目に流してきたテロップやノリをそのままで進めてくるので、おかしみを誘うわけです。いままでさんざんまじめに自衛隊の装備に流し込まれてきたテロップが、「ヲイヲイ」とツッコミを入れたくなる列車爆弾とか、経口投与のためのクレーンホース車の画面に糞真面目な文字列で挿入されるわけです。これね、もうね、明らかにツッコミ待ちなのにそれを糞真面目に行うということが、完全に笑いの世界ですよね。空いた口がふさがらない人たくさんいたと思いますよ。もちろん良い意味ですが。
とはいえ、クレーンホース車でゴジラを冷やして氷漬けにする描写ですが、映画としてみれば「トンデモ作戦」として特撮映画では笑える娯楽ですむのですが、同時にそれを福島第二原発では実際にそうして炉心を冷やそうとしたわけで・・・娯楽作品では笑いものにできる作戦を、現実でそれを実行したということがもう一つ皮肉、風刺としての側面も有するわけで、深いですね。

最も重要なポイントは、シン・ゴジラ、実に沢山の人が、いろんな観点で感想を書きまくってることです。それほど、観た人に何か語らせずにはいられない、書かせずにはいられない。これって間違いなく、傑作・名作の条件ですよね。なので、間違いなくシン・ゴジラは日本特撮史上に残る傑作になると思います。

ちなみに、本当のヒロインは尾頭さんだと思いました。まぁ、石原さとみとの二大ヒロインという意見はありだと思います。

2位「帰ってきたヒトラー」

「ガルパン」「インディペンデンス・デイ・リサージェンス」を抑えて、ここは2位に「帰ってきたヒトラー」を据えたいと思います。
これはブラックジョーク・ブラックユーモアであり、つまりは、大人向けのホラー映画でもあります。
2014年に、1945年に自殺したはずのヒトラーがタイムスリップで蘇ります。映画監督を志す青年が、夢の実現のためにTV局に売り込もうとヒトラーに目をつけ、2014年当時のドイツ中を連れ回すのですが、難民問題や国内問題で色々歪みが出てる中に、ヒトラーが突如現れて市井の人々と交流したらどんな声が聞こえてくるか?という政治フィクションでもあります。
ここで重要なポイントは、青年を始め、みんなヒトラーのことを本物ではなく「ヒトラーの物真似をしてる芸人」だと思ってるんですよね。それを前提としてるんです。なのに、徐々に芸人のはずのヒトラーが当時と同様に熱っぽくドイツへの愛と国内政治批判、ドイツ人の誇りを語り始めると、みんな右寄りの意見を語りだしてくるわけです。
ヒトラーやナチスによるユダヤ人迫害は、ドイツでもタブー中のタブーと聞いておりますが、まさかこの映画が2014年のドイツで制作されるとは、それが最も驚きです。

何よりも恐ろしいのが、ヒトラー自身は本人なので、再び民衆の声によりドイツ帝国を立ち上げようという野望があり、そのために現代のマスメディア・インターネットを利活用し始めてる、その一方で、国民は「芸人」つまりフィクションとして扱ってるにもかかわらず、フィクションだからこそヒトラーのアジテーションに載せられていってしまう、そしてヒトラーはTV局の局長とタッグを組んでほうぼうの番組に出て行く・・・これ、もう立派な政治ホラー作品ですよね。

印象的だったのが、最初にヒトラーに目をつけた映画監督志望の青年。この青年が一番ヒトラーのそばにいたこともあり、徐々に疑問を持ち始めて、最後には「やはり1945年から2014年にタイムスリップしたヒトラー本人で本物だ」という事実を認識してしまうのですが、そこでヒステリックに半狂乱になって「彼は本物だ!殺さないと!」と暴れ回るわけです。
「芸人」つまりフィクションとしてのヒトラーはまだ許容できても、「本物」のヒトラーはもう感情を爆発させるほど拒絶する、これもまた現代ドイツの人たちの根っこじゃないか、と考えると、同じ敗戦国として戦後教育で、大日本帝国時代を「過ち」としてタブーにした日本人としても、考えさせられるものがあります。

果たして感情的に、あれを過ちとしてタブーとして蓋をして良いのでしょうか?多少の制限があったとはいえ、当時の民主主義の中で選ばれた人たちを国民は望み、そして選ばれた指導者は国民の期待に応え、かつ自身の野望を満たすために戦争を起こしたわけですが、その過程すべてをタブーにしては、学ぶものも学べないと思うわけです。個人的には。

とにかく2014年のドイツで、よくこんな映画製作できたな、とんでもねぇ映画作っちゃったね、しかもめっちゃ政治ホラーじゃん、笑えるけど笑えねーよ、ということで2位のランキングでした。


3位「ガルパン劇場版 極上爆音上映会」

あえて「極上爆音上映会」に限定させてもらいました。いやね、もうね、戦車の砲撃が、すごい響くわけですよ。それが比べようのない臨場感なわけです。
ガルパン自体はTVシリーズ観てないのですが、冒頭で簡単な世界観の説明もあり、なにより冒頭早速開始されるエキシビジョンマッチで、各学校・チームの特色・キャラ立ちがしっかり描写されており、すんなり入れる仕組みになってます。
お話の筋としても、TVシリーズからの展開を素直に持込、かつひっくり返してという起承転結がはっきりしてますので、単純に面白いです。

3位にしたのは・・・野暮っちゃー野暮なんですが、作品世界からちょっと引いてしまうようなリアリティのなさが散見されたためですかね・・・。
まず、実弾が飛び交う戦車戦で、各戦車を指揮する人が普通に生身の肉体を外に出してて、その状態の戦車に対して砲撃してる点。これ、うっかり実弾が生身部分にあたったら、普通に死にますよ。戦車の砲弾だったら、かすっただけでもタダじゃすみません。
二点目、これが「ええ〜〜〜!!??」となったのですが、後半の展開で対戦するチームが大学選抜になるわけですが、そのリーダーが、あまりにも見た目が幼すぎて、とても大学生に見えないわけです。一応作中でも飛び級したとかの説明がありますが、どうなんでしょう、飛び級で戦車戦のリーダー・主将としてチームメンバーを束ねられるだけの人間力があるんでしょうか、不安になります。
三点目。これを言っちゃあおしめーよ、なのですが・・・後半の対戦で、昨日の敵は今日の友とばかりに過去対戦したり関わった学園のチームが続々と臨時で大洗に転校したことで戦力がようやくイコールになるのですが・・・正直、それってアリなんですかねー。
もちろん展開的には絶望的に見えてた戦力差に、過去の戦いで信頼関係を気づいた他校チームが駆けつけてくれるのはアツい展開でいい感じなのですが、同時に、「え、これってマジでたった8台の戦車が知恵と勇気を駆使して30台の戦車を殲滅するいわば戦車バージョンのスタンドバトルじゃなかったの?」と軽く失望を感じたのも事実。てか、これで勝ったとしても、参戦した戦車チームは元の学校にすぐ戻るわけなので、大洗としての勝ちじゃないでしょー。せいぜい、即席の学校混在チームを運用出来た西住リーダの勝ちというくらいで・・・。もうちっと「おお!そう来るか!?」みたいな驚きの作戦連発してくれると思ってたのに、拍子抜けしちゃった。


4位「インディペンデンス・デイ・リサージェンス」

「リサージェンス」(resurgence) = 「復活」という意味ですが、ようするに前作で懲らしめた宇宙人ですが、宇宙船がSOS発してて、あらたな宇宙船が復讐しに地球にきたのをもう一度撃退する話です。しかも、敵のエイリアンは銀河全体にわたって侵略行為繰り返してたので、それに対するレジスタンス組織ができてて、その一部も地球にやってきたので、それを保護する人間、狙う敵エイリアン(クイーン)というバトルも出てきます。

単純に前作からのスケールアップです。
前作を観てなくてもある程度は楽しめると思いますが、観ておいた方が良いでしょう。前作からの登場人物が20年というリアルな時間を経てまた出てくるので。
アメリカらしい、頭を空っぽにして楽しめる、人類vsエイリアンのSFスペクタルの秀作だと思います。
この後に「貞子vs伽倻子」が来たので、4位です。


5位「貞子vs伽倻子」

邦画ホラーはクソ。以上。いつからこうなった。
・・・いやね、一体貞子の話でどんだけ尺使うんだよと。この映画見に来てる人たちなら、そんなのわかってるだろうよと。
あと、邦画ホラーってどうしても構成的に、「登場人物が余計なことしたばかりに自分ばかりか周囲の人間たちすら危険に晒す」という非常に「このバカが余計な真似をしやがって」というストレス感を掻き立てる構成じゃないですか。
もう、それが受け付けられなくなってる。
また、リングと呪怨シリーズの怖さって結局「カメラワークとそれに合わせた効果音によるドッキリ作戦」なわけですよ。もう「あ、このカメラワークならつぎはこう動いて、こういう効果音でこういうタイミングで来るだろうなー」ってわかってしまうわけですよ!つまんねー!!!!
しかも肝心の「貞子vs伽倻子」のバトルが、物語終盤でようやく実現というスローテンポ!「インディペンデンス・デイ・リサージェンス」を見習え!
洋画ホラーなら最初の1時間で第一回目のバトル、その結果のどんでん返しで二回目バトル、そこでもう一度どんでん返しで衝撃の結末に!と詰め込めるところを、ひたすら延々と「貞子vs伽倻子」というタイトルで見に来た観客ならとっくに知ってる貞子の呪いで登場人物が死んでく描写とか、呪怨の家でこれまた馬鹿な登場人物がのこのこと入り込んでバカバカしく自滅してく分かりきってる描写、しかもこのシリーズであるがゆえの、とろとろしたカメラワークで時間を無駄遣いしまくってるわけですよ。ホント何やってんだよという感じ。

もうね、タイトルがイロモノじゃないですか。だから、全力でイロモノ映画にしてくれればいいものを、中途半端に真面目にホラー映画にしてくれたおかげで、本当に見たい貞子vs伽倻子のバトルがすごい消化不良になってしまってます。
エンディングで聖飢魔IIの曲が流れるわけですが、聖飢魔IIですよ?それが流れるくらいなら、もう映画のカラーはホラーじゃなくてギャグかイロモノで笑い取りに来るくらいじゃないと、釣り合いが取れないでしょ。観客が常時「ヲイヲイ」とツッコミを入れに来るような、バカバカしいまでのバトル、バトル、バトルの連続で笑いの渦に巻き込む映画じゃなかったの?

金返せ。あと、本当に邦画ホラーに失望した!






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